この模擬披露宴は、ブライダル科の学生が学びの集大成として、結婚式をプロデュースする「実習授業」。テーマを決め、役割を決め、進行もアテンドもすべてを学生だけで行います。もちろん、新郎新婦役も学生。

毎年、府中市の大國魂神社にある本物の披露宴会場を借りて行われ、当日は列席者として、先生や関係者、学生約100名が出席。本当に結婚しちゃうんじゃないか? というくらい、超リアルに行われます。

勝手に「新婦=大好きな幼なじみ」と設定してみた

“模擬”披露宴なので、出席している新郎新婦も親族も友人関係も、当然ながら、学生が演じているだけ(でも、新郎新婦役の学生は、本当に付き合っちゃうことも多いのだとか……)。そして、僕に与えられた役割は「新婦の友人」。でも、それだけだと面白くないので、自分の中で勝手に「新婦=ずっと想いを寄せていた幼なじみの女の子」という設定にして参加してみました。だって、そのほうがリアルに楽しめそうだから。

ちなみに、当日のタイムテーブルがこちら。

12:30 受付
13:00 結婚式スタート
13:07 新郎新婦入場
13:12 指輪交換&誓いのキス
13:25 新郎新婦退場
13:26 披露宴スタート
13:31 主賓あいさつ
13:41 ケーキ入刀
13:51 乾杯あいさつ
13:56 お食事スタート
14:16 余興その1
14:31 お色直し
15:15 余興その2
15:37 手紙朗読
15:42 新郎新婦退場

まさに分刻みのスケジュール! 実はこれでもかなり省略していて、進行表はA3の紙にびっちり手順が書かれていました。うーん本格的!

挙式のスタイルは、流行のシビルウエディング

受付で渡されたのは、席次表と新郎新婦のプロフィールが書かれた紙。ふたりの出会いから結婚に至るまで、ちゃんと細かく設定があるんです。こういう小物一つひとつまで、学生が手づくりしているそう。

さて、その紙を見てみると「新郎:川島大地、新婦:佐々木未菜」と書かれています。僕の勝手な設定では「新婦と幼なじみ」なので、当然あだ名で呼び合うはず(実際は、他学科の女子なので、もちろん面識はありません)。ということで、呼び名は……「みな」だから、「ミリアム」に決定。

そんなこんなで結婚式がスタート、まずは「シビルウエディングミニスター」が入場します。今回の挙式は、「シビルウエディング」というスタイルなのだそう。

ちなみに、日本ではこれまで神社で行う「神前式」や教会で行う「キリスト教式」が一般的でしたが、最近は司会者(=シビルウエディングミニスター)の立ち会いで婚姻手続きをセレモニーとして行う「人前式」が人気なのだとか。つまり、今回の模擬挙式は、最先端のウエディングスタイルというわけです。

いよいよ、新郎新婦が入場。同時に、僕の妄想もスタートします!

【妄想中】

ミリアム、きれいだ……。こんなに近くにいるのに、すごく遠くに感じる……。

今回、取材ということで無理やりねじ込んでもらったのに、なぜか最前列の席だった僕。ちなみに、新郎新婦の横に並んでいる女性は「ブライズメイド」、男性は「アッシャー」と呼ばれる付添人。実は僕、結婚式に出席するのはこれが初めて(模擬だけど)。何もかもが新鮮に映ります。

そしてこのあと、「指輪交換」を経て、なんと「誓いのキス」も行われました。もちろん実際にするわけではなく、顔と顔を近づけるだけでしたが……。

【妄想中】

幸せになってほしい……。でも、見ちゃいられないよ、ミリアム!

「学生時代の恩師のスピーチ」がリアルさを高める

挙式のあとは披露宴。スポットライトを浴びて新郎新婦が再入場します。まずは、新郎からのウェルカムスピーチが。この間も、司会、照明、カメラマンなどなど、スタッフ役の学生たちは忙しそうに動き回っています。

ちなみにテーブルに座っている列席者は、ブライダル科の1年生。こちらは「キャ〜ステキ〜」と歓声をあげ、普通に披露宴を楽しんでいました(笑)。

続いて、主賓あいさつ。新婦側は先生が、新郎側はなんと校長先生がスピーチ。「学生時代の恩師」という設定で「新郎の川島大地くんは、学生時代から非常にまじめで……」と語るので、もうどこまでが模擬なのか、だんだんわからなくなってきました……。

ケーキ入刀に本気の歓声とフラッシュの嵐!

スピーチのあとは、定番の「ケーキ入刀」、これも本物のケーキを使用。司会にうながされ、約100人の列席者の目線はケーキ越しの新郎新婦へ。2人揃ってナイフを持ち、切ったケーキをお互い食べさせあう「ファーストバイト」まで……。やはり女子はこういうのが好きなのか、ものすごい歓声とフラッシュが。ここまでリアルだと、妄想のテンションも上がっていきます。

【妄想中】

ミリアム……っ! 幼い頃におやつを「あーん」ってしてくれたアレがファーストバイトじゃなかったのか……っ!!

ちなみに、この後の乾杯のあいさつには、リアルに僕がお世話になっている先生が登場。おかげで、ちょっとだけ現実に戻りました(笑)。

本物の結婚式顔負けの、料理や余興の数々

ここで披露宴も一段落。歓談の時間に入ると、次々に料理が運ばれてきます。もちろん料理は、ふだんここの結婚式場で提供しているものとまったく同じものだそうで、さすがにどれもおいしかったです。

もちろん「新郎新婦の友人による余興」も行われました。全4組の出し物は、ダンスありヲタ芸あり、どの余興も模擬とは思えないほど力が入っています。

これらの余興は1年生のチームによるもので、この日のためにアイデアを練り、練習を重ねてきたのだそう。とくに「川島007」というチームの、ナオト・インティライミの「カーニばる?」という曲にのせたダンスは最高で、思わず一緒に踊りだしたくなりました。

いよいよ、感動のフィナーレへ!

受付からおよそ3時間が経過し、披露宴もいよいよ佳境へ。余興やサプライズイベントなどを経て、最後は新婦から新郎への手紙の朗読が行われました。

エンディングムービーが流れる中、新郎新婦が拍手に包まれ、退場していきます。ここまでくると、模擬だとわかっていても本当に感動的。

【妄想中】

ミリアム、おめでとう……。もう、昔とは違う、ひとりの大人の女なんだね……!

スタッフの涙が物語る、模擬披露宴への情熱

すべてが無事に終了し、最後は参加者全員が集まってごあいさつ。リーダーを務めた小鷹さんの言葉や、スタッフとして参加した学生の涙には、模擬披露宴で感じた以上の感動がありました。

式が進むにつれて、現実と妄想の境目があいまいになり、「これ、本当の結婚式なんじゃないか?」と何度も思ってしまうほど、リアルでクオリティも高かった模擬披露宴。ブライダル科のみなさん、列席させていただき本当にありがとうございました。

【おまけ】

模擬披露宴終了後、新婦を見つけて思わず「ミリアム!」と呼び止めたら、「誰?」って顔をされました。おかげで、ようやく現実に戻れました。


■ 授業紹介
模擬挙式・披露宴
ブライダル科2年間の学びの集大成として行われる実務実習。挙式・披露宴のすべてを把握するため、コンセプトや演出の企画立案から、当日の司会進行、アテンド、メイク、フラワーアレンジ、照明、撮影など、実際のブライダル現場にある仕事や役割を学生のみで行う。仕事の細部までを任されることで、学生一人ひとりが責任を持って仕事に取り組むことの大切さを学ぶ。