トキヲ先輩
おなか減ったから学食行ってもいい?
編集部
ダメダメ、取材してから!

と、相変わらずあまりやる気が感じられない先輩ですが、まずはゼミを担当する喜田安哲先生に、そもそも心理学とは何なのか、聞いてみることに。
人が関わることすべてが「心理学」の領域
トキヲ先輩
あの〜、心理学ってイマイチよくわかんないんだけど……。
喜田先生
すごく簡単にいえば、感情とか思考とか、人が関わることはすべてが心理学。「人を理解する学問」と考えてもらえばいいかもしれません。
トキヲ先輩
ふ〜ん。
喜田先生
人って選択を繰り返して生きていますよね。たとえば先輩が、学食に行くか行かないかも選択です。そのときに、どういう「条件」が整ったら行きたくなるのか、あるいは行きたくなくなるのか。
トキヲ先輩
おなかが空いたら行きたくなるけど?
喜田先生
今日のゼミの題材に、顔の表情を読み取るという実験が出てきます。たとえば、口角が上がっているとか、マユが下がっているというのも人が表情を読みとるための「条件」です。
トキヲ先輩
うん。なんとなくわかるような。。
喜田先生
「条件」は顔のつくり以外にもあります。人が泣いている写真を見ると、悲しいのかなと思いますよね? でも実は、何か賞をもらって、うれしくて泣いているのかもしれません。さまざまな「条件」を設定して、人の振る舞いがどう変わっていくか。そうやって、人の心理を考えていくんです。
トキヲ先輩
う〜ん。なんとなくわかるような、わかんないような。。
喜田先生
あとは実際、授業を受けてもらうのが一番早いですね。そうだ、心理学を学ぶと、「あの人がこんなふうに振る舞っていたのは、どんな条件が作用したからなのかな」などと考えるので、怒る気持ちも少し冷静になるんですよ。
トキヲ先輩
え、ほんとに!?

やる気のない先輩の心理が、少し変わりかけたところで、ゼミの教室へと移動。ちなみに恵泉女学園大学では、人と豊かに係われるようになってほしいという思いから、太極拳やペアストレッチ、マッサージやお灸など、体験型の授業も行っています。
心理学を専攻する学生は、1〜2年生のときに必ずこうした授業を受けて、人とじかに触れ合うことを学び、3〜4年での本格的な調査・研究へ。授業の一部は公開講座のため、「あたし肩が上がらないのよ〜」「ウチの母もそうなんです」……なんて、おしゃべりをしながら、地域の人たちとコミュニケーションをとっているんだとか。
体がほぐれてくると、気持ちもほぐれてくるもの。「心理学」と聞くと難しいと思いがちだけど、やっぱりベースは「人」なんですね。
顔を見るだけで、人の気持ちが読み取れるってほんと?
この日の授業は、『心理学を変えた40の研究』という文献からテーマを引用、担当の学生が発表をして、ゼミのみんなで意見を言い合うというもの。
テーマのひとつが、喜田先生の話にも登場した「どんな気持ちか、顔を見ればすぐ読み取れる!」。この実験は、簡単に説明すると、以下のような方法で行われます(本当はもっと細かい設定があるんですが、要約しています)。
例)
「幸せ」:友だちがやってきて、彼女は幸せです。
「怒り」:彼は怒ってケンカをはじめそうです。
2 西洋人の男性と女性の写真を見せ、感情に対応した表情を選べるかどうかを実験・比較する。
【結果】感情にともなう顔面表情は人類共通!
伊勢田さん
……発表は以上です。
司会
何か意見がある人はいますか?
みんな
表情は人類共通だという結論でしたが、同じ笑うにしても、やっぱり少しは文化によって受け取り方が違う場合もあるんじゃない?
みんな
生まれたときには「うれしい」と「悲しい」、2つの感情しかないって聞いたことがあるんですけど……。
喜田先生
はい。そうするとさ、みんな何で感情を読み取ってるんだろうね?
みんな
表情? 声? あとは、行動とか話す内容とか。
喜田先生
表情って意見があったけど、いったい何を見てるの?
みんな
目!
みんな
口!
みんな
マユ毛!
喜田先生
みんなもさ、マユを描き換えるじゃない。なんで?
みんな
描き“換える”わけじゃ……(笑)。昔は怖く見えるのがいやで、まっすぐに描いていたけど、最近は就活メイクを教わったので、山をつくるようにしてます。
喜田先生
ってことは、明らかにそこに意図を込めてるよね?
喜田先生
左の図からは、快・不快を表すのは「口」で、積極さを表すのは「マユ」というのがわかります。みんなもちょっと、口角を上げて、マユ毛下げる顔やってみて。見るからに困った顔してるでしょ?
みんな
顔、痛い〜。
喜田先生
こうやって顔を動かしてると、コロッケのマネをしてる岩崎宏美みたいになっちゃうよね。
みんな
逆じゃない? 岩崎宏美のマネしてるコロッケだよ。
喜田先生
(苦笑)。どちらにしても、みなさんがマユ毛をいじるのは、あながち間違ってないってこと。何かを強調したいから、その形にする。メイクは明らかに「認識」、卒論のテーマとして取り上げても面白いと思いますよ。

「私はカウンセラーになりたくて、心理学を専攻をしました」「1〜2年生のときに、喜田先生の授業を受けたら面白くて」「先生、面白いよね〜。ひとりですべるけど(笑)」「私はまわりの人から『すぐ顔に出る』って言われてて……。心理学を勉強してみて、こういうことだったのかって実感しました」などなど。
最後は、ゼミ生みんなで「口角上げて、マユ毛上げて」。積極的かつ活発に見える顔をして記念撮影(下の写真参照)。みなさんありがとうございました!

心理学って、テレビでやってる心理テストみたいなもんかと思ってたけど、もっと全然奥が深かった。あと、マユとか口の形は重要! でもよく考えたら、オレの顔ってマユないのね。アフロに隠れて気づかなかった……。
■ ゼミ紹介
恵泉女学園大学
人間社会学部 人間環境学科 喜田ゼミ
記憶、思考、知覚など、心理学の中でも、とくに「認知」に関わる分野が専門。障害を負った人とのやりとりや振る舞い方、ネガティブな記憶をポジティブに変えるには、信頼と安心の違いなど、研究テーマはさまざま。文献を読み、きちんと仮説を立てたうえで、卒論に向けて調査・実験を行っていく。また、エクセル統計・テキストマイニング(文字の分析)など、データ分析に強い学生が多いのも特徴。