さて、この日うかがったのは、恵泉女学園大学人間社会学部現代社会学科3年の松村ゼミ。ゼミのテーマは「環境社会学」ということですが、具体的にはどんなことを学んでいるんでしょう? 松村正治先生、教えてください!

みんなが幸せになれる“環境”を考える

「環境というと、地球温暖化などの環境問題を思い浮かべる人が多いかもしれませんが、うちのゼミでは“環境”という言葉をもっと広く考えています。多様な人たちが、豊かに生きていける“環境”。そうとらえると、自然だけでなく、福祉や地域、産業などもテーマに含まれるんです」

授業のなかでは、大学がある多摩地区の里山、公園、商店街、障がい者施設、動物園などを訪ねて、地域のために働いている人から話を聞いたり、実際にボランティアをすることもあるとか。

「たとえば、夏のゼミ合宿では、地域の森林資源を活用するために薪ストーブが有効だという話を聞き、薪の宅配事業を手がける企業を訪問しました。薪割りを体験してみると大変な作業だとわかります。こうした実体験を通して“環境”を考え、学びのテーマを探していきます。」

こちらが、松村ゼミで行っているフィールドワークの数々。

社会福祉法人のグループホームへ。リサイクル事業の現場で、障がい者にとっての廃棄物の意味や、居住環境のあり方などを聞く。

遊んでいるようにも見えるけれど、これもフィールドワーク中の1コマ。ゲーム形式でコミュニケーション能力を高めるための学習。

主婦であった女性たちが起業し、こだわりの食材でジャムなどをつくる企業を訪問。食や環境、女性の働き方を考えるきっかけに。

精神に障がいがある人をサポートするNPOの農園&コミュニティレストランへ。福祉と環境を結びつけた事業展開について学んだ。

ちなみに、この日のゼミは残念ながら教室内で、4年時に書く卒論テーマの発表を行うとのこと。3年生のうちに、何度も発表を重ね、卒論の準備を進めていくんだそうです。

フィールドワークで得た経験は、勉強にどのように結びついているんでしょうか?

松村先生

まずは、たねの発表からどうぞ。

たねさん

卒論では、学校内外の視点から、環境教育を見ていきたいと思っています。

松村先生

なるほどね。

たねさん

私がインターンをしているNPO「樹木・環境ネットワーク協会」では、中学校の授業に協力しています。そこでは……。

松村先生

教育はすぐに結果が出ないから、論文にするときには、そこが難しいよね。

たねさん

そうなんです……。

松村先生

恵泉では、1年のときに全員が園芸の授業をやるじゃない? みんな最初は面倒くさがっているけど、1年後にはやってよかったっていう人、多いよね?

みんな

あの授業は、よかったよね〜!!

みんな

みんながみんな、環境問題に熱心な大人にはならないとしても、環境教育を受けているかどうかで興味の持ち方は変わってくるかも。

松村先生

卒論を書くには、まだちょっとアイデアが足りないかもね。そうだな〜、悩んでください(笑)。

松村先生

じゃあ次は、あっこの発表ね。

あっこさん

多摩地区のコミュニティカフェを訪問したとき、年代ごとに意見が違うので、継続していくのがなかなか難しいという話を聞きました。

みんな

うんうん。

あっこさん

そこから私が興味も持ったテーマは、多くの人をまとめて、地域コミュニティをつくるためにはどうしたらいいのか。コミュニティデザインに関する本を読んでみたところ……。

みんな

「コミュニティデザイン」って、そもそも具体的にどんなことするの?

あっこさん

え〜と(汗)。

松村先生

たとえば、地域でイベントをしたり、公園の遊び場以外の活用法を考えて、住民の交流の場をつくったり?

あっこさん

そう! それそれそれ!!

みんな

(爆笑)

みんな

そういえば、アメリカのスラム街では、コミュニティをつくることで犯罪が減ったって話もあるよね。

みんな

九州の大学でも、食をテーマに地域活性化の取り組みをしてたよ!

スペースの都合上割愛しますが、こんな感じで、みんなの意見や質問がバンバン飛び交いながら進んでいく授業。ただ人の発表を聞くだけでなく、ゼミ生全員で活発な議論をしながら、各自のテーマを掘り下げていきます。

社会のために自ら考え、実行できる人になる

授業を見ていて面白いと思ったのは、ゼミ生たちがみなニックネームで呼ばれていたこと。その理由を、松村先生に聞いてみました。

「今日はちょうどコミュニティデザインの話が出ましたが、これもゼミの雰囲気をつくるひとつの方法、言ってみれば『ゼミデザイン』ですね(笑)。できるだけ学生がリラックスして、自由にしゃべれる場にしたいと思っているからなんです」

なるほど、学生をニックネームで呼ぶのも、ゼミの「環境づくり」というわけですね! でも、彼女たちのエネルギーが発揮されるのは、ゼミのときだけではないそう。

「恵泉女学園大学が関わっている『グリーンライブセンター』という施設があるんですが、なかなか子どもが遊びに来てくれないという悩みを抱えていました。そこで、学生たちは子ども向けに顔ハメ看板をつくったり、クリスマス会を企画したりしたんです。
そういう体験を通して、地域や環境の問題はけっして難しいものではないということ、自分たちにもできることがあるんだというのを、学んでくれたらいいですね」

最後に先生から、ゼミ生にこんなメッセージも。

「女性はもちろん仕事もするし、出産や子育てなど、社会に出てからも多様な生き方があります。一般に男性よりも地域と関わる機会が多いでしょう。そのときに、自ら考えて問題を見つけて実行に移していける。そんな人になってほしいと思っています」

そのへん、ゼミ生のみんなはどんなふうに感じているの? と思って聞いてみると……。

「実際に見たり聞いたりしなければわからないことを学べるのが、フィールドワークのいいところ!」「先生は恵泉の魅力にも気づかせてくれるし、女性としての生き方を考えさせてくれます」「あ、そうそう、うちら仲もいいよね〜!」

と、ここでも、授業中と同じように意見&コメントが続々! 学内の人たちを巻き込み、流しそうめんイベント(写真)を開催したこともあるという彼女たち。松村ゼミのエネルギーの源はやっぱり、いろんな“環境”をつくり、盛り上げていきたいという思いなのかもしれません。

松村ゼミのココがステキ!
とにかく現場! フィールドワークで学べる
自ら考えて行動、実行力が身につく
自由に発言できるラフな雰囲気が◎

■ ゼミ紹介
恵泉女学園大学
人間社会学部 現代社会学科 松村ゼミ

男性・女性、健常者・障がい者、先進国・途上国、現在世代・将来世代、人間・そのほかの生物など、それぞれを取り巻く「環境」の違いをめぐって生まれる社会問題を考えることがテーマ。そのため、扱う領域は、自然環境のみにとどまらない。フィールドワークを通し、実践的な学びを深めていく。