今回おじゃましたのは、仏教文化について学んでいる千葉公慈先生のゼミ。ふだんの授業では、般若心経を読んだり、仏教にちなんだ俳句や和歌を詠んだりしているそうですが、この日は「だるま絵体験」。仏教とだるま? なんだかわからないことも多いので、まずは先生にいろいろ聞いてみました。

テーマは「生活の中にある仏教」

山口

そもそも、なぜ「だるま」なんでしょう?

千葉先生

だるまとは「達磨大師(だるまだいし)」という、禅宗の開祖とされる人物。みなさんご存じの赤い置物のだるまも達磨大師の坐禅姿を模したものなんです。

山口

では、今日の授業の「だるま絵」とはいったい?

千葉先生

写経と同じ、精神集中の修行ですね。修行とはいっても、好きな絵を描いて楽しみ、私たちの生活をよりよくしようというもの。こういう授業をきっかけに、仏教に親しみを持ってもらいたいと思って。

山口

なるほど。

千葉先生

私のゼミのテーマは「生活の中にある仏教」。そう、身近なものって意外と仏教につながっているんですよ。

山口

といいますと?

千葉先生

たとえば、盆踊りは目連さんというお坊さんが自分の母親が地獄から極楽に行ったとき、喜びのあまりみんなと踊ったのがはじまり。つまり、感謝の踊りなんですね。

山口

へえ〜。

千葉先生

日本人は盆踊りなどの行事の中で感謝を表現したり、写経やだるま絵を描くことでリフレッシュしてきました。そういう知恵を活かせば、現代人の暮らしももっと楽になるんじゃないかな。

ところで、この語り口、どこかで聞いたことがあるような……。

たずねてみると、千葉先生は、テレビ朝日系「お坊さんバラエティ ぶっちゃけ寺」にレギュラー出演している曹洞宗宝林寺の住職さんとのこと。さすがお話が面白い!

「だるま絵」を描くと、こうなれる……はず!

さて、いただいた資料によると、だるま絵にはこんな効果があるそうです。

1. 姿勢がよくなり、心と身体が落ち着いてくる。
2. 心が、すがすがしくなる。
3. 表情がおだやかになる。
4. 集中力が身につく。
5. 忍耐力が増す。
6. 字が上手になる。
7. ストレスが軽減し、心も軽くなる。
8. 自然治癒力が向上する。
9. 仲間ができる。
10. ご先祖さまが喜ぶ。

文字だけではイメージが伝わりにくいので、学生図鑑のビジュアル担当・鈴木さんに写真で表現してもらいました。

【Before:だるま絵体験前の私の心(イメージ)】

無邪気な子どもと、かわいいキャラクターに囲まれ楽しい日々ですが、
なんかセカセカ忙しくて、ついつい険しい表情になりがち。

簡単に自己紹介をすると、私は現在、1歳の長女の子育て中。子育ては楽しいけれど、初めての経験ばかりで緊張の連続。なんやかんや、ストレスもたまっていると思います。

それが、だるま絵を描くと……

【After:だるま絵体験後の私の心(イメージ)】

上の10項目を満たすと、たぶんこんな感じ。 
きっと、ご先祖さまも喜んでくれるはず!?

え〜……逆にわかりにくくなってしまった気もしますが、この姿を目指して、さっそく学生に混じって授業に参加させてもらうことに。

仏教の醍醐味は、心を自由にすること

まずは、先生からだるま絵の歴史について説明があり、いよいよ体験スタート。使うのは半紙と筆ペン、見本の絵をマネしながら、顔の真ん中から書きはじめます。

(1)まずは鼻から

(2)続いてマユや目のまわり

(3)顔を描きあげて

(4)最後に目玉を入れて完成!

描いているときは、しゃべらずに集中。できあがった絵は名前を書いて黒板に貼り、また新たに描きはじめます。

黒板に貼られただるま絵を見て「千と千尋に出てきそう〜!」「これ◯◯に似てない?」などなど、盛り上がるゼミ生たち。最初は見本そのままだった作品も、先生の「自由に描いて」の言葉で、だんだん個性的になっていきます。

せっかくなので、みなさんの作品をいくつか紹介しましょう。

力強い表情の達磨さん。うまい!

壁に向かって坐禅を組んでいる様子。

勝手にセリフをつけちゃいました。

相田みつを風!?

だいぶデフォルメ。ピアスしてる?

みんなに好評だった癒し系の達磨さん。

「仏教は形やルールは厳しいけど、心を自由にすることが目的。だから、うまい下手ではなく自由に書くことが大事なんです」と先生。仏教というと堅苦しいイメージがありましたが、そんなことないんですね。

さて、本日、私が描いた「ベストだるま」はこちら。

まわりの自由な雰囲気もあり、気づいたらネコを書いてました。でも、やっぱり「うまく描こう」「面白いことを言おう」という大喜利的な気持ちも捨てきれず……。

一応、私の心をビジュアルで確認。

【After:だるま絵体験後のリアルな私の心(イメージ)】

自然体になろうと思ってみたものの、やっぱりまわりを気にして狙いにいっちゃう。
米粒は無理だけど、ゴルフボールに文字を書けるくらいには集中できた。

今回、子育てのストレス発散のつもりで挑んだだるま絵体験ですが、まだまだ雑念が多すぎて理想の姿には遠く及ばないようです。

最後に、このゼミの面白いところってなんですか?

後藤さん

「すべてのものは仏教につながっている」ということで、過去には「ティッシュ」をテーマにした授業もあったんですよ(笑)。日常のものを仏教的にどう考えるか、それが楽しいですね。

山本さん

私は今、卒論を書いているんですが、「忍者について」仏教の視点でまとめています。

伊藤さん

やっぱり、先生が面白い! 1・2年のときに千葉先生の授業を受けて、もっと話を聞きたいとゼミを受講する学生も多いですよ。講義を受けるだけで、なんとなくありがたい気持ちになれるのもいいところ(笑)。

ふだんの何気ない暮らしの中にも、仏教的な解釈を加えることで新たな発見が生まれる。これが、私が仏教文化ゼミに潜入してみて感じた面白さ。でも、なんといっても先生のキャラクターが最大の魅力ですね。千葉先生、ゼミ生のみなさん、ありがとうございました!

■ ゼミ紹介
駒沢女子大学
人文学部 日本文化学科 仏教文化ゼミ

インドから中国、日本にかけての仏教文化全般を広く学びながら、仏教思想をはじめとする日本人のものの考え方を、身近な不思議や暮らしから考察していく。講義は、テーマに沿った全体の勉強(本年度は「般若心経をサンスクリット語で読む」がテーマ)と、学生それぞれが仏教文化にまつわる関心事を研究し発表する時間に分かれており、さまざまな角度から学びを深めることができる。

最後は「ハイ、ボーズ(坊主)!」と千葉先生。一同爆笑で、パチリ。