今回、編集部が門を叩いたのは、駒沢女子大学人文学部人間関係学科(2013年4月リニューアル)。この学科の特色は、コミュニケーション力を実践的に身につけられることなのだそう。ならば、と学生のみなさんに提案したのは、見知らぬ相手とトークを繰り広げてもらう「コミュ力 五番勝負」。60代の主婦から1歳の赤ちゃん(!)まで、あらゆる年代の男女5人とマッチアップしてもらうことに。

日々、コミュ力を磨いているのなら、余裕で5連勝だよね!……と言いたいところですが、学生のみなさんはまだ大学1年生。果たして勝負の行方は?

「コミュ力 五番勝負」ルール説明
大学生3人が1チームとなり、それぞれの対戦相手と10分間トーク。手がかりは、最初の自己紹介のみ。トーク後、仲よくなれたと思ったら○の札を、そうでもないと思ったら×の札を対戦相手にあげてもらい、勝敗を判定します!

【第1試合】VS 女子高生 

対戦相手:小川まりいさん(16歳)
大学生チーム:堀さん、高田さん、高橋さん

高橋さん

高校は共学? 女子校?

女子高生

女子校です。

堀さん

私も女子校出身だよ!

まずは「女子校出身」という共通点をアピールして先制ジャブ! 
会話の糸口を探る大学生チーム、積極的に仕掛けていきます。

髙田さん

共学の大学に憧れたりしない?

堀さん

女子大はみんなサバサバしてるから、いいよ〜。カモ〜ン。

女子高生

……(笑)。

高橋さん

今は楽しい時期だよね〜。JK時代は大切に過ごしたほうがいいよ。

ここで繰り出しのが、経験者ならではのワザ「先輩のアドバイス」。
大学生チーム、ここから勢いにまかせて畳みかけていきます。

堀さん

それ、本当だよ! 制服着られるの今しかないからね。「じゃあ、いつ着るの?」

女子高生

……あ、「今でしょ」?

髙田さん

無茶ぶりは止めてあげて!(笑)

高橋さん

えっと、彼氏とかは?

女子高生

います。

リア充だな〜。彼氏はイケメン?

女子高生

イケメンではないですけど……写真ありますよ。

みんな

きゃ〜! 見せて見せて!

流行の一発ギャグは見事にスベったものの、女子トークの鉄板ネタ・恋愛話に持ち込み、なかなかに場を盛り上げた3人。4人で男の子の写真を見ながらキャッキャしている間に試合は終了しました。さて、女子高生の判定はいかに?

「明るい雰囲気だったので」と、はにかみながら○をあげた女子高生。まずは1勝、幸先のいいスタートですが、次なる対戦相手は……。

【第2試合】VS 男子小学生

対戦相手:髙田叶夢(かなむ)くん(9歳)
大学生チーム:木戸さん、金本さん、津田さん

津田さん

(虫カゴを見ながら)虫とか、好きなの?

男子小学生

カブトムシが好き……。

まずは相手をよく観察するのがコミュニケーションの鉄則。
教科書どおりの攻めを見せる大学生チーム。

金本さん

へえ〜、すごいね〜。

木戸さん

夏休みはどこに行くの?

男子小学生

海……。

津田さん

ふだんは何をして遊んでるの?

男子小学生

仮面ライダーごっこ……。

金本さん

仮面ライダーになりたいんだ?

「相手の目線に合わせる」戦法で、なんとか仲よくなるきっかけをつくりたい3人。
小学生男子の反応やいかに?

男子小学生

……。

津田さん

仮面ライダーでは何が好きなの?

男子小学生

ウィザード……。

木戸さん

そういえば「竜王」っていうのもなかった?

津田さん

いや、「電王」じゃなかったっけ?

男子小学生

……。

“おねえさん”に囲まれ照れもあるのか、終始、寡黙だった男子小学生(自己紹介も名前を言っただけ)。数少ない情報から接点を見出そうと、子どもと共有できる知識を総動員して話題を振り続けるも、判定はやはり……?

ためらわずに×の札。理由を聞いてみると「カブトムシの話のほうがよかった」とのこと。痛恨の1敗を喫した大学生チーム。勝負はこれで振り出しに戻りました。

【第3試合】VS 赤ちゃん

対戦相手:海野円花(まどか)ちゃん(1歳4ヶ月)
大学生チーム:常木さん、高田さん、村上さん

常木さん

よし、だっこしようか。

「赤ちゃんの扱いには慣れている」と、臆することなく、
すっと手を伸ばした大学生チームの面々。しかし……

赤ちゃん

えう〜……(ぐずる)

村上さん

ああ〜、ごめんごめん! じゃ、お歌を歌おうか?

みんな

♪大きな栗の木の下で〜

赤ちゃん

あう、あう(にっこり)

常木さん

これどうかな。いないいな〜い、ばあ!

みんな

ばあ!

赤ちゃん

うああ〜ん!(大泣き)

みんな

ごめんね〜ごめんね〜。

髙田さん

ほら、お菓子あげる、お菓子!

ぐずる赤ちゃんに対し、奥の手「モノで釣る」を決行! 
相手に合わせて臨機応変に対応するあたり、コミュ力の高さがうかがえます。

赤ちゃん

あう……(泣き止む)

知らない大人たち(現場には取材チームも入れて20数名)に囲まれ、不安を隠しきれない様子の赤ちゃん。あの手この手で仲よくなろうとした3人は「せめてオモチャがあれば……」と準備不足を悔しがるものの、判定は?

○と×の両方をあげた(お父さんによって握らさせられた)赤ちゃん。これは……引き分けでしょうか? ということで、1勝1敗1分けのイーブン。勝負は残り2戦に持ち越されることに!

【第4試合】VS 警備員さん

対戦相手:後藤君男さん(63歳)
大学生チーム:目崎さん、堀さん、濱田さん

堀さん

警備員さんが交代のときにやる「敬礼ポーズ」が、かっこいいと思ってました!

さりげなく相手をほめるという高等テクを繰り出した大学生チームに、
警備員さんもノリノリで話しまくります。効果抜群!

警備員さん

あれをやるのは、しっかりけじめをつけないとただのオジサンになっちゃうからだね(笑)。でも、ただのポーズじゃなくて、ちゃんとした理由があるんですよ。みなさんは、どうして私がこの服を着ているかわかりますか? この服をよく見てください。ね、警察官が着ている服に似ているでしょう? つまり、犯罪抑止効果があるんだね。捕まえるのではなく、未然に防ぐということです。こうしていろいろな面から、みなさんが安心して勉学に励める環境をつくっているのが私たち警備員。ほかにもね……(長いので、以下略)

濱田さん

正門に警備員さんがいると安心します。

警備員さん

そう言ってもらえると、やりがいがもてますね。みんなが安心できれば、気持ちよくあいさつを交わせるでしょう。正門で見ていると、朝はみんなまだ元気がないんだよね。だから、あいさつをする。オジサンたちにはあいさつで元気にさせる、ひとつのワザみたいなものがあるんですよ。そういう点ではあいさつというものは……(以下略)

目崎さん

コマジョには何年くらい勤めているんですか?

さらに、相手が答えやすい「具体的な質問」で畳みかける大学生チーム。
ついに警備員さんは、自身の人生を語り始めました……。

警備員さん

もう今年でかれこれ12年になるかな。オジサンが一番の古株。私が警備員を始めたのは、それより1年前の新宿タカシマヤで……(以下略)

終了の合図に「ああ〜残念!」と話し足りない様子の警備員さん。まだまだ話は尽きなそうですが、判定をお願いします!

「二重丸!」と○を2つ出した警備員さん。その理由は「話しやすかったです。実は私は以前、寮長をしていまして、当時いろいろな学生がいましたが……(以下略)」とのこと。

【第5試合】VS 主婦

対戦相手:大沼順子さん(63歳)
大学生チーム:神谷さん、高橋さん、佐藤さん

佐藤さん

今はどちらにお住まいなんですか?

口火を切ったのは大学生チームの面々。
まずはベーシックな質問で、相手の情報を引き出す作戦に出ました。

主婦

神奈川で夫と年金暮らしをしているのよ。みなさんは一人暮らし? それとも実家?

神谷さん

実家から通っています。

髙橋さん

私は一人暮らしです。

主婦

家事をするのが大変でしょう?

髙橋さん

それが、意外と楽しいんですよ。

主婦

まあ、えらいわねえ。私にも娘がいてね、親からするといつまでも心配で……。ねえ、ちょっと聞きたいんだけど、友だちのようなお母さんと厳しいお母さん、どっちがいいかしら?

みんな

もちろん、友だちみたいなお母さん!

徐々に打ち解けてきた主婦の方の問いに、迷わず答えた3人。
ときには相手の話題にのっかり、聞き役になることも必要です。

主婦

あら、そうなの?

佐藤さん

やっぱりやさしいお母さんがいいよね。

神谷さん

うん。大沼さんみたいな人がお母さんだったらうれしいな。

主婦

まあ、そんなこと言って。うふふ……。

みんな

うふふふふ……。

まるで長い時間を経て再会した親子のような、“母と娘たち”の会話と化した勝負は、終始おだやかかつナチュラルに進行。2勝1敗1分けの現在、この判定で勝ち越しか引き分けかが決まります。さて、注目の判定は?

「やっぱりかわいい女の子はいいわね!」と、にこやかにかかげられたのは○の札。「コミュ力 五番勝負」は、通算3勝1敗1分けで、見事に学生チームの勝利という結果に。社会人顔負けのトークスキルを発揮し、安定のコミュ力を見せつけた大学生チームのみんな。どうやら、その実力は本物だったようです。

自由な学びの中で身につける“コミュ力”が、人生を切り拓く

学生たちのそばで勝負の行方を見守っていたのは、人間関係学科の「基礎ゼミⅠ」クラス担当者のひとり、榎本環(たまき)先生。企画に参加してくれた学生たちは、みんなこの科目を受講している、いわば「基礎ゼミ選抜」というわけ。

「まずは、無事に勝ち越せてホッとしています。とはいえ、3勝1敗1分けという結果は、だいたい予想どおり(笑)。仕込みなしの真剣勝負の結果としては、十分ではないでしょうか」

どうやら先生は、学生たちのコミュ力に自信をもっていた様子。「基礎ゼミⅠ」での学びが、今回の勝利に結びついたのでしょうか?

「基礎ゼミでは、レポートの書き方や情報収集の方法、プレゼンの基本など、大学での学びのベースを身につけています。その一環として、4月には基礎ゼミ合宿を行い、新入生全員が参加しました。リニューアルを迎えたこの学科には元気でポジティブな学生が集まりましたが、合宿を通して、学生たちは大学での学びの楽しさを知ったようですね。大学での学びの特徴は、一言で言えば“自由”。一人ひとりが、自分なりの学び方を見つけてくれたらと考えています」

試合後も和気あいあいと会話を交わす、大学生と対戦相手のみなさん。

ゼミを通して、コミュニケーションに欠かせない「主体性」が磨かれたことが、今回の勝因ということでしょうか。榎本先生はこんなことも話してくれました。

「大学は自由ですが、言い換えればそれは、自分から動かなければいけない場所でもあるということ。だからこそ、人と関わりながら、自分の居場所を見つける方法を学んでほしい。それが、人生を切り拓いていく力になるはずですから」

ちなみに、みんなは、なんでこの学科を選んだの?

最後に、今回の企画に参加してくれた学生に、話を聞いてみました。

堀さん

私は以前から地域ボランティアをやっていて、いろいろな年代の人と関わることがステキだなと思って。コミュニケーションを本格的に学びたくて選びました。

目崎さん

私は逆に人見知りだったから、飛び込んでみようって。目の動きや仕草から感情を読み取る「非言語コミュニケーション」とか、授業も面白いですよ。

高田さん

高校と違って自由なぶん、授業やゼミにも真剣に取り組むようになりましたね。黙っていたら単位がもらえないかもしれないし(笑)。

五番勝負の間も撮影中も、先生も一緒になって、終始盛り上がっていた「基礎ゼミ選抜」のみんな。自然と積極的になれる学科の雰囲気が、コミュ力を伸ばしてくれるのかも……そんなことを思った編集部でした。

■ 学科紹介
駒沢女子大学
人文学部 人間関係学科

2013年4月の学科リニューアルにともない新体制がスタート。コミュニケーションを切り口に、応用心理学、身体文化・化粧研究、社会学、文化人類学、メディア研究、法学などの学問分野を横断し、幅広く「人間関係」を学ぶ。講義形式の授業に加え、1年次からの少人数ゼミをはじめとするグループワーク形式の授業を数多く行い、深い教養と実践的なコミュニケーションスキルを身につけていく。

【おまけ】

終了後の帰り道、勤務に戻っていた警備員さんと、学生がバッタリ再会。ガッチリ固い握手を交わしていました。コミュ力は、新しい出会いを生む!?