だいたい、学生時代にケンカすらしたことない吹奏楽部出身の私に「番長」なんて、務まるのでしょうか。これまでも、英語だけのネイティブゼミでアメリカンジョークを言ってくるなど、ムチャぶりでおなじみの学生図鑑編集部ですが、この「ゼミ番長シリーズ」にも、やっぱり条件がありました(泣)。

……え、え〜と、ガチンコ体当たり取材にもほどがありますが、とりあえず「住空間」という情報だけを頼りに、勝手にゼミを予想してみることに(番長なのに素直!)。

「住空間スタジオ」とはどんなゼミなのか? 想像してみる

■ どんな授業をしているのか?
マンション購入も視野に入ってきた30代会社員の私にとって、「住空間」とは、ざっくりいえば「間取り」にほかならない。佐藤ゼミでは、きっと女子ならではのオシャレな視点で、間取りを研究しているに違いない。

■ 先生はどんな人なのか?
間取り研究の第一人者。リフォームやリノベーション、インテリアデザインまでを手がけ、暮らす人に安らぎの空間を提供。間取りのマジックであらゆる住まいの問題を解決し、みんなを「なんということでしょう!」と驚かせる。通称「間取りの匠」。

■ どんな学生が所属しているのか?
① 「間取り」にとにかく詳しい(LDK、UB、WICなどの用語が飛び交う)。
② 「坪」を聞けば、一瞬で「平米(㎡)」への換算が可能。
③ 週末はFrancfranc、LOFT、東急ハンズ、IKEA(たまにニトリ)に出没し、オシャレなインテリア雑貨探しにも余念がない。

以上のような学生が、熱心に「間取り」を研究をしている。

はい。住空間デザイン=「間取り」、先生=「匠」、学生=「オシャレ」という、なんとも薄っぺらい予想ができあがりました。

さて、残りは発表内容。せっかくなら、私の終の棲家となるべき「理想の間取り」を一緒に考えてもらおう! ということで、自宅ポストに投函された新築マンションのチラシを片手に、間取り図を書いてみることに(のちほどご紹介)。これで番長デビューの準備は完了! 気合を入れてゼミに突撃します。

番長、いよいよゼミ生たちとご対面!

京王線稲城駅からバスに揺られること約5分。到着した駒沢女子大学は、落ち着いたキレイなキャンパス! 私の中のどこかに眠っていた乙女心に、火がつきそうです(番長だけど)。受付を済ませ、ゼミが行なわれる研究室に入ると、模型や建築デザイン系の本がズラリ。「さすがは、間取りゼミ!」と予想的中を確信しつつ、まずは担当の佐藤勉先生にごあいさつ。

「何も知らないくせに、ゼミに潜入させてくれ」という、通常の取材としてはありえない失礼な趣旨説明にも、快くOKをいただきました。今回は、卒業制作の中間発表に向けて、ひとり3分間の発表練習を行うとのこと。私も机のすみっこにスタンバイして、いよいよ授業がスタートしました。

ひとり目は、「はねいす」という、イスと空間がテーマの発表。リビングに合うオリジナルチェアを考えてみるという内容です。独創的なデザインがプロジェクターから映し出され、コンセプトや機能、今後の制作スケジュールを説明して、発表は無事終了。ここからディスカッションが始まります。

佐藤先生

発表の中にあった「空間を構成する」というのは、どういう意味? たとえば「空間にふさわしい」とか「空間の中で関係を保つ」とか、そういうことですか?

発表者

えーと……空間に……家具を配置する……ことですかね?

佐藤先生

それでは伝わりませんね(笑)。「構成する」というのは、少し難しい言葉なので、もうちょっとわかりやすく説明できるようにしないと。

学生

そういえば、家の中で人が集まるリビングに、あえて一人用のイスを置く意味って何ですか?

発表者

リビングにいるけれど、孤立したいときに座る場所がほしい……。

学生

孤立って(笑)。つまり「ひとりの時間を作りたい」とか、そういうことですか?

発表者

う〜ん、そうです!

佐藤先生

リビングにいるときにも、ゆるやかに個人の空間を作りたいという欲求はあるかもしれませんよね。みんなの指摘で、いいポイントに気づけたんじゃないですか? そういう意図や背景を含めて、もう少し具体的な説明ができるようにアイデアを練り直してください。

おお! か、かなりツッコまれてる! こうやって先生とゼミ生から意見をもらうことで、卒業制作の方向性や改善点が見えてくるものなんですね。ひとつ気がかりなのは、「間取り」の話題がまったく出なかったこと。きっと、発表時間が足りなかったからに違いない! 次の人に期待しましょう。

「間取り」の話題はナシ。いったい何を勉強してるの?

番長であることも忘れ真剣にノートを取り続ける私(しかも、先生のご厚意で、毎回必ず意見を求められる……)。その後、「駅前広場」や「ブティックカフェ」など刺激的なテーマが続き、いつのまにか全員の発表が終了。結局、最後まで「間取り」の話題は出ずじまいでした。

完全に予想を外してしまったか……と軽く落ち込みつつ、このゼミではいったいどんなことを勉強しているのか、佐藤先生に聞いてみました。

ーー住空間デザインって、「間取り」を研究しているんじゃないんですか?

「学科としては、もちろん『間取り』も研究対象のひとつです。ただ『間取り』という平面を、『空間』という立体にとらえ直して考えていきます。住空間デザイン学科には、建築とインテリアデザインのコースがあって、私のゼミはインテリアデザイン。中でもとくに、『インテリア空間の計画と設計』をテーマに学んでいます」

ーーなんと! でも「駅前広場」なんて、大きなテーマの発表もありましたよね?

「インテリア空間というのは、『人が中心となって、人の目線で見る空間』のこと。そういう意味では、必ずしも室内だけではなくて、街全体をインテリア空間と位置づけることもできます。だから、街づくりをテーマにしてもいいんですよ」

ーーずっと気になっていたんですが、「ゼミ」と「スタジオ」の違いって……?

「『ゼミ』に対して、『スタジオ』は、学生がより主体的かつクリエイティブに考え、それを手を動かして形にしていくことが特徴です。学科名が『住空間デザイン学科』に変更されたのに合わせて、こう呼ぶことになりました」

ーーそうなんですね。ちなみに、建築やインテリアというと理系のイメージですが、ここは人文学部ですよね??

「人文学部で建築やインテリアを学べるのは、たぶんうちの大学くらいではないでしょうか。建築と聞くと専門的な知識だけを学んでいると思われがちですが、この学科で重視しているのは、文系ならではのコミュニケーション能力です。卒業後の就職先は、住宅メーカーやリフォーム会社、住宅設備・家具メーカーなどさまざま。どんな仕事についても、専門的な知識を一般の人にわかりやすく説明できる、コミュニケーター的役割を担える人になってほしいですね」

「理想の間取り」に厳しいツッコミが!

なるほど! 恥ずかしながらようやく全容がわかってきました。さて、ここでついに、番長渾身の「理想の間取り」(なお手書き)を発表する時間に。「間取り」だけでなく、「インテリア空間」的視点から見るとどうなのか。みなさん、率直なご意見をお願いします!

私の「理想の間取り」

学生

わはは。ソファー小さい!

学生

玄関が洋室に食い込んでますね(笑)。あと、どの部屋にもドアがないんですけど!

学生

この隠れ部屋ってなんですか!?

学生

南国風のバルコニーと和室ですかあ……。なんか統一感がありませんね。

ゼミ生の発表のとき以上に、激しいツッコミが! ちなみに、どうしたらすてきな間取りが作れるのか聞いてみると……。

学生

まずは部屋の大きなコンセプトを決めないと、ですね。

学生

この空間でどういうふうに過ごしたいか。そこから考えてみるといいんじゃないですか?

おっしゃるとおり! ぐうの音も出ない、とはこのことです。さすがは、「間取り」もとい「住空間」の専門家。聞くまでもなく厳しい評価が予想されるものの、この間取りに点数をつけるとしたら……。

みんな

う〜ん……20点!

最後に、ゼミ生のみなさんに、佐藤スタジオについてたずねてみました。すると、一番のおすすめポイントは「先生との距離感が近くて学びやすい」ことだそう。ちなみに、みんなは佐藤勉(さとう・つとむ)先生のことを「ベン先生」と呼んでいるらしい。う〜ん、なかよし! 中には、オープンキャンパスで、この学科のファンになった人もいるとか。

さて、予想のズレおよび厳しい評価に心を折られながらも、「ゼミ番長が行く」第1回は、無事に幕を閉じることができました。打たれっぱなしでぜんぜん番長感なかったけど、こんなんでいいんでしょうか……。

みなさんからの温かくも厳しい指摘は、今後の住まい探しに役立てたいと思います。あ、ほんとに家を購入するときは、また相談に来ます!

最後に、「予想レポート」の採点はこちら!

予想は惨敗、間取りは赤点! これじゃあ単位がもらえませんね……。

■ ゼミ紹介
駒沢女子大学
人文学部 住空間デザイン学科 佐藤スタジオ

「空間と人とのつながり」をテーマにインテリアデザインを学ぶ。研究対象は幅広く、家具などの室内オブジェクトから住宅、商業施設の設計、街づくりまでさまざま。利用者の視点を意識した討論や意見交換を行いながら、課題や卒業研究を仕上げていく。また、住空間デザイン学科では、二級建築士受験資格をはじめ、インテリアコーディネーター、商業施設士、福祉住環境コーディネーターなど、多くの資格取得も可能。