コラムが始まって早々、ネタバレしてしまってスミマセン。上の2つの手帳、これこそ人文学部メディア表現学科4年の鈴木ゼミが制作した「女子高生向けの手帳」なんです。

鈴木ゼミで学ぶのは、一言でいえばデザイン。デザインというと、色や形を考えること……と思いがちですが、それだけにあらず。コンセプトや使いやすさを考えることも欠かせません。担当の鈴木利彦先生によれば、手帳制作は、ものづくりの根幹である企画書づくりからスタートするとか。まずはその様子から、のぞかせてもらいました。

Step.1 企画書づくり

企画書に盛り込むのは、どんな女子高生をターゲットにするのか、使い手のためにはどんな手帳の中身が必要か、表紙や大きさの具体案などです。

手帳をつくるのは、A・Bの2班。各班のメンバー3人で、企画内容をディスカッションしていきます。

【A班】

斉藤さん

高校生って、手帳を持ってない子もいるよね。私は、テスト期間や、大学のオープンキャンパスに行った3年生の時期しか予定は書かなかった。

笹原さん

私なら、プリクラを貼れるページがほしい。卒業のとき、友だちに手帳にメッセージを書いてもらって、それは今でも思い出に残してあるよ。

笠原さん

手帳って、ちょっと時間があるときにも開くよね? 勉強に役立つページがあったらいいかも。

斉藤さん

じゃあ、高校生の中でも「受験を控えた3年生」をターゲットに、思い出づくりにも役立つ手帳を目指そう。

【B班】

森安さん

高校生って、学校の予定はあまり書かないから、「遊びたい盛りの高校生」をターゲットにしようか? 

三好さん

高校生の頃、シンプルで自分好みに使える「無印良品」の手帳が人気だったな。そうだ、バイトをしてる子のために、おこづかい帳のページがあったら便利だよね。

武田さん

高校生が気に入る表紙って、どんな感じだろう……。

森安さん

自由度の高い手帳にしたいね。表紙も、自分で差し替えられるようにできないかな?

みんなの意見を整理して企画書にまとめたら、鈴木先生がチェック。

鈴木先生

A班は、切り離すと英単語帳になるページがあるんですね。ページのつくりが、具体的にイメージできていますか? B班の選べる表紙は、どうやって交換するんでしょう? 

赤字が入って、より詳細が詰められました。

\こちらが、できあがった企画書!/

次は企画書をもとに、各班、どんな手帳をつくるのかを発表していきます。

Step.2 プレゼン

プレゼンは、プロジェクターを使いながら行われます。ときおり、先生から鋭いツッコミも……。

斉藤さん

私たちA班は、受験と卒業を控えた3年生がターゲット。コンセプトは「使い終わっても残しておきたくなる手帳」にしました。

鈴木先生

このサイズの手帳にした理由は?

斉藤さん

書くスペースは多いほうがいいけど、通学カバンの中でかさばらない大きさを考えたんです。

鈴木先生

表紙は「不思議の国のアリス」がモチーフ?

笠原さん

女の子でアリスが嫌いな人は少ないと思って。受験生用ということも考えて、かわいさとシンプルさのバランスをとりました。

鈴木先生

イラストレーションって、実はすごく難しい。たとえばマンガの場合、絵によって物語の印象まで変わってきます。デザインとしては、好みが分かれやすいジャンルですよ。

鈴木先生

ちなみに、B班の表紙は?

三好さん

自分の好きなデザインのものを、入れ替えられるようにします。

鈴木先生

みんな、スマホにカバーつけてますよね? カバーにこだわるのは、日本人特有の文化だそうです。手帳の表紙にも、自分で選ぶ楽しみがあるのは面白いかもしれませんね。

鈴木先生

表紙の素材は、決めましたか?

三好さん

ええと……。

鈴木先生

デザインは五感で感じるもの。視覚からの情報は80%、そこに、手・耳・鼻などから得た情報をプラスするといわれていて。どんな手触りなのかは大切ですよ。

こんな感じでプレゼンは続きます。終了後は、鈴木先生のアドバイスをもとに、各班、企画書を修正。残すは制作です。

Step.3 制作

制作は、パソコンルームのMacや専用の道具を使って行われます。ふだん鈴木ゼミでは、デジタル写真や紙などのメディアも扱っているため、みんなパソコン作業はお手のもの!?

手帳の各ページをデザイン。B班は、手帳のコンセプトや女子高生の好みを考えながら、フォントや罫線の色を議論中。

印刷したら、丁寧にカット。「実際に紙にすると、反省点や新たなひらめきが出てくるはず。それを生かして!」と鈴木先生。

リングで閉じるタイプの手帳をつくるA班は、各ページに穴を開けていく。穴の位置がずれないよう、緊張の一瞬……。

制作に使うのは、こんな道具。紙を選ぶための見本帳や、印刷したときの色を確認するカラーガイドなど。プロっぽい!

\やっと、完成!/

A班:受験を控えた3年生用 手帳

■ 表紙

アリスをヒントにした女の子らしいイラストを使いつつも、水色とダイヤ柄を合わせることで、甘すぎない仕上がりに。

■ 月間スケジュール

同じ月のスケジュールページが2つ。一方は勉強の予定用、もう一方にはプライベートの予定を書き込んだり、プリクラを貼れるようになっています。

■ 単語帳

切り離して単語帳にできるページは、受験生用の手帳ならでは。色ごとに、使い分けができる工夫がされています。ほかに、思い出づくりに役立つ、寄せ書き用ページもアリ。

B班:遊び盛りの女子高生用 手帳

■ 表紙


表紙は、ビニールカバーの中を入れ替えられるようになっています。デザインは、イメージの異なる3タイプ。

■ 月間スケジュール&シール


自分好みに使えるよう、各ページともシンプル。イベントごとのシールが用意されています。ヒマつぶしに読める「美容のマメ知識」のページがあるのも、この手帳の特徴。

■ おこづかい帳

遊びたい子はバイトをしていそうだし、お金の管理が必要なはず……ということで、月ごとに1ページ。隣ページは、フリースペース。自由度の高い手帳に仕上がりました。

デザインを通して、考え方&コミュニケ―ションを学んでほしい

企画から実制作まで、手帳づくりの課題に密着させてくれた、鈴木ゼミ。かなり積極的に意見を交わしながら、みんなで作業を進めていましたが、いつものゼミもこんな感じなのでしょうか? そのあたりを先生に聞いてみると……。

「ゼミでは幅広いデザインを扱っていますが、パソコンでデザインをつくるのは、あくまでひとつのゴール。技術の習得も必要ですが、そこに至るまでの考え方や企画のほうが大切なんです。そのため、ふだんの授業はディスカッションがメインです。

議題として、切りつけ事件が起きた『AKB48の握手会の意義』を取り上げ、『AKB48のコンセプトは?』『そのために、握手会は欠かせないもの?』などをディスカッションしたことも。一見デザインではないように見えるテーマかもしれませんが、それは、AKB48自体はもちろん、ファンとのコミュニケーションをデザインすることにつながるんです。

生活していくなかでは、誰しも、情報の送り手・受け取り手の両方になる。だからこそ、コミュニケーションに対する考え方を学んでほしいと思っています」

ほかには、「自分を芸能人として売り出すなら?」なんてテーマもあったとか。ゼミ生が旬だと思う話題をピックアップするため、自然とディスカッションが活発化するのだそうです。いつかまた、そんなオモシロ課題のときに、おじゃまさせてくださーい!

鈴木ゼミのココがステキ!
幅広いデザインを学べる
客観的に考える力が身につく
テーマは身近なこと、AKBにも詳しく!?

■ ゼミ紹介
駒沢女子大学
人文学部 メディア表現学科 鈴木ゼミ

作品づくりを通して、自分を表現する力、共同作業に取り組む力を養う学科。鈴木ゼミではグラフィックデザインと写真を学びます。そのほか学科での学びは、アニメーション、編集デザイン(エディトリアル)、映像デザイン、コミュニケーションデザインなど、さまざま。製品の売り出し方や、ショップのコンセプトなどを考える課題も。