イラストで振り返る、私と「とりじん」

今から3年ほど前、2011年の芸術祭で偶然遭遇した、とりじんの演奏会。そこから今回の密着取材に至るまでを、まずはイラストエッセイでお届けします。

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取材当日。とりあえず駅で待ち合わせ

朝9時半、ムサビの最寄り駅である鷹の台駅にて待ち合わせ。メンバー同士仲のいいとりじんたちは、集まるなりおしゃべり(さえずり?)に夢中!

タッチパネルは、くちばしで操作するとかしないとか……。道行く人々から注目を浴びつつ、ムサビのキャンパスへと向かいます。

講義に図書館、ランチも。とりじんinムサビ

到着したらさっそく授業の時間。そうです、とりじんだって勉強するのです。というわけで、ムサビに通うとりじんにとっての必修科目「とりじん学」の講義に潜入してきました。

「一般的な鳥ととりじんとの違いとはな……」。

教授は、なんととりじんのメンバーでもあるベンガルワシミミズクのホーホー・マさん。どうやらとりじんだけでなく、人間も受講できるみたいです。

授業のあとは、キャンパス内をぶらぶら。日本画学科がモチーフ用に飼育している、鶏小屋にやってきました。

鳩や孔雀を見つめるとりじんたち。実はとりじん、空を飛べないのです。鳥のようで鳥じゃない……ますます謎が深まります。

鶏小屋の次は図書館へ。いつも授業の合間によく来るのだそうです。ちなみに、オカメインコのなごみちゃんが読んでいるのは『デザインノート』。さすが美大生!

さて、お昼に、とりじんがやってきたのは、通称タカホと呼ばれる学食「鷹の台ホール」。MAUランチなど、安くておいしいご飯が自慢です。ちなみにムサビ内には、「エミュウ」というパン屋さんもあります。人間だけでなくとりじんも快く受け入れる大学、ムサビ。さすがです。

キミミクロオウムの純くんが食べているのは……なんと鶏の唐揚げ! どうやら内臓は人間なので、共食いにはならないそうです。

うーん……。

ますます謎なので、ストレートに質問してみた。

もっととりじんについて知りたい! というわけで、インタビューを決行。「とりじんあんさんぶる」結成のいきさつから、ひそかに温めている今後の野望まで、あれこれ聞いてみました。

――それではインタビューを始めます。まず「とりじんあんさんぶる」結成のきっかけは?

ぴよし

とりじんはしゃべることができないんだ〜。だから音楽でムサビの人と仲良くなりたい! と思って、ジローくんと一緒に「とりじん募集」の貼り紙をしたのが最初だよ。そしたら、なごみちゃんやジョニーさんが来てくれたんだ。

なごみ

私は中高オーケストラ部だったから、大学でも楽器を続けたくて。オケより小さい規模のアンサンブルをずっとやってみたかったの。

ジョニー

俺もずっと吹奏楽部だったんだけど、人が多いのがあんまり好きじゃなくて。募集の貼り紙を見て、「これこそ俺のための場所じゃないか!」と思って応募した。

――じゃあ全員楽器経験者?

ぴよし

それが参加の条件なんだねぇ。楽しいことだけじゃなくて、ちゃんと演奏もしたかったから。

ジョニー

「とりじんあんさんぶる」のほかにも、ホーマさんがオケ、カネコくんがジャズ研、俺が軽音やめて外部のバンドでベースやってたりもするんだぜ。

――みなさん、かけもちされてるんですか! そして、ちゃんと面接みたいなことするんですね。

ぴよし

うん、会ってみて「ごめんなさい」ってなったとりじんも中にはいるよ。

ジョニー

一緒に演奏したいって気持ちは、すげえうれしいんだけどな。

――では採用条件というか、仲間にしたいなと感じる人とは?

ぴよし

まずとりじんであること! あと音楽が好きということ!

ジョニー

:みんなが気づいてないだけで、実はとりじんはそこらへんにいっぱいいるからな!

――メンバーそれぞれ役割分担ってありますか?

ジョニー

だいたい、なごみ&ジローがまとめてくれる。でもあんまりかっちりは決まってないかな。カネコは編曲とかセトリ決めとか、何気に権力持ってる。純は部屋取り(笑)。

ホーマ

自分はムサビの教授でとりじん学を教えてる。でもどこの学科の教授かは謎だから、このとりじんホントは何者なの? って、ときどき人間に言われる……。

ぴよし

自称教授(笑)。

――芸祭で「とりZINE」を買ったんですけど、クオリティ高いですよね。掛川花鳥園にロケに行ってましたけど、これは事前に撮影許可を取ったの?

なごみ

鳥とふれあえる! と聞いて、ダメもとで「とりじんでもいいですか?」って聞いてみたの。そしたら広報の人が一緒に回ってくれて。カネコくんは、仲間のコガネメキシコインコに会わせてもらえたり。

ぴよし

ホーマさんなんか、エミュウに襲われたんだねえ(笑)。

ホーマ

餌を持ってエミュウ広場に入っていったら、わらわら集まって来て……。

なごみ

ホーマさんよりエミュウのほうが背が高いから(笑)。

ホーマ

ホントに怖かった……。

――プライベートでも一緒にいることが多いの?

なごみ

一緒に旅行行ったりね。ホーマさん所属のオケの演奏会とか、カネコくんのライブにもみんなで行った。

ジョニー

なごみとは、2人でドライブにも行ったねぇ

なごみ

うん。でもジローくんとも、ときどき2人で遊びに行ってる!

ジョニー

男性陣を振り回すなんて、悪女だな(笑)。紅一点がいいって言って、女子のメンバーは入れさせないし。

ぴよし

女の子ひとりだから必然的にモテちゃうんだねぇ(笑)。

なごみ

でも芸祭でやった、とりじん総選挙では票があんまり伸びなくてショックだった……(泣)。

――ちなみに、これまでうれしかったことは?

ぴよし

ツイッターとかで、「なんか変な団体だけど演奏うまい」って言われるのが一番うれしいな。

なごみ

ムサビ以外の人とか、全然知らない人が見に来てくれたり。

ぴよし

鳥好きなお客さんもけっこう多いよね!

なごみ

ツイッターのフォロワーさんにも鳥好きが多くて、それがきっかけで「新春鳥仮装&交流会&ライブ」(※開催終了)に出演が決まったり。あと、結婚式にも出たよね。

ジョニー

新郎新婦もまわりの人もみんな喜んでくれたな。

――逆に、悩みや大変なことは?

ジョニー

「とりじん」として、一括りにされちゃって個性を見てもらえない。

なごみ

あとは、「脱いでください」って言われたり……生身なのに!

ホーマ

何を脱げと言うのじゃ。

ジョニー

飲食系のバイトに受からないんだよな。電車に乗るとじろじろ見られたり。

ぴよし

たまに職質も受けるよ。

なごみ

とりじんは暑いところが苦手だから、夏は外で演奏できないのも悩み。

――鳥と人の境目を生きるのもなかなか大変ですね。ちなみに、小川にある「やきとり大吉」によく行かれてますよね?

なごみ

1年目の芸祭打ち上げで行ったのが最初。マスターに「とりじんでも大丈夫ですか?」って聞いたら、「君たち珍しいね」って(笑)。

ジョニー

なごみが「焼き鳥屋さんととりじん」というテーマで課題を制作した関係で、第1回目のライブをやったんだな。そしたらマスターも常連さんも気に入ってくれて、今や大吉のマスコットキャラみたいになってる。

――サイン色紙も飾ってもらってましたよね! ところで、今年卒業するとりじんが多いと聞きましたが、今後の活動はどうするの? あとメッセージもあれば。

ぴよし

どんな形であれ今のメンバーで、やれるだけやってみたいな。

なごみ

今年の芸祭は出たい! 紅白も出たい! あと武道館!

ジョニー

誰かのバックで演奏したいな。

ぴよし

紅白&武道館実現に向けて、みんな応援よろしくね!

ホーマ

ツイッターのフォロワー全員来れば1600人か……。

ジョニー

ダメだ、埋まらない(笑)。

ぴよし

おにぎり(※おにぎり大魔神)にフォロワーが負けつつあるよ!

――ムサビには「おにぎり大魔神」「ムサヴィランズ」といったマスコットキャラが、何気にたくさんいますからね(笑)。

なごみ

おにぎりには負けたくない! 芸祭で「もにまるず」とコラボしたり、盛り上がってるのが悔しかった……。

ジョニー

でもあいつアニマルじゃないじゃん! とりじんの方がアニマルじゃん!

ぴよし

ムサヴィランズは舎弟(笑)、噂ではジローくんに頭が上がらないとか……。

――裏ではいろいろあるのですね(笑)。「とりじんあんさんぶる」のみなさん、ありがとうございました!

さらにさらに、イベントにも参加してみた

当初は、上のインタビューで取材を終える予定でしたが、「音楽スタジオでのリハーサル見学に来ませんか?」とのお誘いを受け、急きょ飛んでいくことに。

やってきたのは都内某所の音楽スタジオ。こんなに本格的なところで練習しているんだなあ……。

ナレーションも入れて、本番さながら。いつもはトランペットのジローさんがカホン、ギターのジョニーさんがアコーディオンを担当。曲やイベントに合わせて、担当楽器も変えているのですね。

そして翌日行われたイベント「新春鳥仮装&交流会&ライブ」にも参加してきました。鳥好きな人たちが集まるイベントで、文字どおりトリを飾った「とりじんあんさんぶる」。

登場した瞬間、まるでバードウォッチングをする野鳥の会(?)のように、いっせいにカメラが向けられます。演奏が始まると会場はますます盛り上がり、私を含め、お客さんの心をすっかり鷲掴みにしたのでした(鳥だけに)。

おわりに

インパクトのあるビジュアルばかりに目がいきがちですが、今回の取材を通して、彼らの持つ音楽への情熱に心動かされました。

「本気で音楽がしたい! 人を楽しませたい!」という思いを抱いて集まった、個性豊かなメンバーたち。初めて聞いた人でも、楽しくて思わずリズムにのってしまうような、魅力的な演奏。

「とりじんあんさんぶる」とは、ただの珍しい生き物の集まり……ではなく、知れば知るほど好きになってしまう、すてきなアンサンブル団体でした。

その人気ぶりは、ムサビでの取材を目撃した学生が、次々とツイートするほど! 私も今回の取材でよりファンになり、イベントではグッズを買い、最後にはサインまでいただいてしまったのでした(とりわけ好きなのはハシビロコウのジョニーさん!)。

では最後に、2013年武蔵野美術大学芸術祭での演奏をお聞きください。

★とりじんあんさんぶるHPはこちら http://torizin.web.fc2.com/